2021年(令和3年) 6月26日(土)付紙面より
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準絶滅危惧種のタニシを使って循環型農業の在り方を探る「タニシ米プロジェクト」がスタートした。山形大農学部(鶴岡市若葉町)の佐藤智准教授と学生が取り組んでいるもので鶴岡市中山の稲作農家とタッグを組み「タニシ米づくり」を目指す。
佐藤准教授と学生が、かつて田んぼにたくさんいたタニシに着目。同学部の実験田でタニシを放した場合と、そうでないケースを比較研究したところ、タニシがいる田んぼの方が稲の生育を促し、収量を約10%向上させることを突き止めた。今後は稲作農家の協力を得、これまでの実験段階から実践段階へステップアップすることが課題となっていた。
佐藤准教授が知り合いから紹介された中山の稲作農家・佐藤好明さん(59)が全面協力することになり今月から田んぼにタニシを放して稲の生育状況を調べることにした。
国内にタニシは「マルタニシ」「ヒメタニシ」「ナガタニシ」「オオタニシ」の4種類生息しているが、偶然にも佐藤さんの田んぼ脇の水路にいた「マルタニシ」を使用。24日に佐藤准教授やインドネシアの留学生・アリアさん、農家の佐藤さんが1アールの田んぼ(つや姫)に約30匹放した。今後は雑草を取りながらタニシがどれくらい増えるか、稲の生育はどうかについて調べる。農薬は一切使わず、9月に収穫して「タニシ米」を試食する。
佐藤准教授によると、田んぼでタニシは土を取り込みながらフンを出し有機肥料の役割を果たす。タニシがいる田んぼはミジンコや藻類が増え、それを食べる昆虫が集まりだすなど、田んぼの中で小さな食物連鎖が生まれるという。
農家の佐藤さんは「自分自身、タニシの米づくりに興味がある。昔の田んぼにはドジョウやイモリがたくさんいた。そうした明治、昭和の農業を取り戻したいという気持ちもある」と語った。
佐藤准教授は「将来的にはタニシの有機米をネット販売するまでこぎつけたい。農家の収益アップ、休耕田の復活、今では準絶滅危惧種となったタニシを保全していくことが夢」とプロジェクトの着地点を描いている。