2022年(令和4年) 3月15日(火)付紙面より
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黒森歌舞伎(県指定無形民俗文化財)の「太夫振舞(たゆうぶるまい)」が13日、酒田市黒森の黒森日枝神社で行われた。冷水を浴び体を清めた地区の青年役者が神前でくじを引き、来年2月の正月公演の演目を「昔談柄三荘太夫(むかしがたりさんしょうだゆう)」に決めた。
黒森歌舞伎は約280年前から地区住民による妻堂連中(五十嵐良弥座長)が、地区の鎮守・黒森日枝神社の神事の一環として受け継いできた。年間を通じてさまざまな行事があり、太夫振舞はその最初のもの。氏子や妻堂連中の関係者が集まり、神撰(しんせん)の儀で「神意」によって来年の演目を決める。昨年はコロナ禍のため中止となり、2年ぶりとなった今年、くじを引く「撰者」に選ばれた青年役者は、酒田西高3年の佐藤太一さん(18)。肉や魚、卵を断って精進潔斎してこの日に臨んだ。
佐藤さんはこの日午前11時から神社で祈祷を受けた後、下履き姿で社殿を出て、境内の井戸に向かった。白装束の世話人から白布で背中、胸を乾布摩擦してもらった後、こもの上にあぐらをかいた。手おけにくんだ井戸水を「ひとーつ」「ふたーつ」と数えながら7杯半、白布をかぶった佐藤さんの頭上から浴びせた。周囲から「がんばれー」の声援が飛んだ。
社殿に戻った佐藤さんは神前に正座。竹ひごの先に付けたこよりで、一升ますの米の上に置かれた演目候補のくじ3枚から1枚をつり上げ、脇にいた五十嵐座長の手に収めた。
「安寿と厨子王」として知られる「―三荘太夫」は、現在では黒森歌舞伎のみに伝わる演目。五十嵐座長によると、2003年以来の上演という。4月から仙台市内の大学に進学する佐藤さんは「無事に選ぶことができて安心した。進学するが、これからも黒森歌舞伎の舞台に立ち続けたい」と話した。
一方、延期となっている今年の正月公演は、新型コロナウイルスの感染状況を鑑みながら春か秋に奉納上演する方針。