2024年(令和6年) 3月24日(日)付紙面より
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東北公益文科大大学院、鶴岡市(致道ライブラリー)、慶應義塾大先端生命科学研究所の連携企画「なぜ薔薇は愛されるのか~西洋のバラ・庄内のばら~」講演会が20日、同市の同大学院ホールで行われた。鶴岡市のバラ園の歴史や、昔と現代の西洋バラの違いなどについて市民たちが学んだ。
鶴岡市の“知の拠点”鶴岡タウンキャンパスでの講演を通し、「庄内地域で大切に守り育て、未来につなげていきたいもの」について市民が考える機会を提供しようと3者が連携して企画。鶴岡市民を中心に40人が聴講し、オンラインで20人が参加した。
初めにあつみホテル温海荘支配人で温海温泉旅館組合の若松邦彦理事長が「なぜ薔薇は愛されるのか~鶴岡のばら~」と題し講演。若松理事長は庄内唯一のバラ園・あつみ温泉ばら公園について「1963年に相撲場を整備してつくられた。現在の噴水は土俵があった場所で、観覧席だった場所にバラが植栽された。2012年に鶴岡公園の酒井家ゆかりのバラが移植され、現在は90種約3000株となっている」と説明した。
また、「鶴岡公園のバラはもともと酒井家16代忠良(ただなが)氏が致道博物館内で自ら育てたもの。のちに博物館の整備事業のため鶴岡公園東側に移植され、2012年には同公園再整備計画により一部があつみ温泉ばら公園に移植された。3年後には約200株が温泉街の県道沿いに移され、毎年観光客の目を楽しませている」と解説。
鶴岡でバラが愛される理由については「昭和50年代ごろまで鶴岡ばら会という団体があり、会員数は約350人。忠良氏が自ら汗を流して大切にバラを育てる様子を知った市民が『私たちも育ててみよう』と流行したのではないかと考えている」と見解を述べた。
続いて東北公益文科大の遠山茂樹名誉教授が「なぜ薔薇は愛されるのか~西洋のバラ~」の演題で講演。西洋バラの歴史について「19世紀を境にバラの栽培は大きく変わる。これは中国原産の四季咲きバラや日本の野生バラが欧州に渡り、交配により現在のような色鮮やかなバラが誕生し、品種改良も進んだ」と解説した。
さらに、19世紀以前の“オールド・ガーデン・ローズ”について、絵画の中に描かれたバラを例に挙げながら「アルバ種など白バラが中心で、唯一ガリカ種が赤かった。観賞用だけでなく香料や料理、薬などにも使われ、特に『ドッグ・ローズ』の異名を持つカニナ種はビタミンCを含有し、万能薬として用いられた」と述べた。