2025年(令和7年) 4月19日(土)付紙面より
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春から初夏に向かって、庄内に祭りの季節がやって来た。桜の季節は鶴岡市の沿岸地域の鼠ケ関や由良でみこしを担いで海に入る勇壮な祭りなどが、大型連休の後には「庄内三大祭り」の酒田まつり、鶴岡天神祭、大山犬祭りが続く。「祭り」という文化は、各地域に根差した歴史や伝統によってつくられている。そして、文化は地域の活性化にもつながる。
今年の庄内は、平成の大合併(2005年)から20年の節目の年を記念した出し物が用意され、特別なにぎわいが演出される。祭りは、しっかり保全・伝承して人に見せることが肝心だ。社会全体が物価高で打ちひしがれている時、祭りを盛り立てることで、地域から元気づくりを発信していきたい。
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今年の天神祭は、市合併20周年を記念し、広域的に特に多彩に繰り広げられ、合併前の旧町村から伝統の民俗芸能が、鶴岡市中心街でのパレードに参加して彩りを添える。各地域ごとに▽藤島が東栄小学校の「獅子踊り」▽羽黒が「羽黒太鼓と山伏」▽櫛引が「丸岡桐箱踊り」▽朝日が白装束で練り歩く「おいずり」▽温海が「念珠関辨天太鼓」。
東日本大震災後、東北を元気にしようとの企画で「東北六魂祭」が各県持ち回りで開かれた。青森ねぶた、盛岡さんさ踊り、秋田竿灯など、6県それぞれを代表する郷土芸能が参加してにぎわいを見せ、経済効果も生んだ。市合併20周年記念の天神祭も、6市町村自慢の郷土芸能が一堂に集まるとなれば、祭りを通して郷土を知るめったにない機会。人が集まる事での経済効果も大いに期待できる。
夏の「赤川花火大会」も合併20周年を祝う特別プログラムを企画する。本番を前に鶴岡地域以外の5地域で4~7月に2~3分間の花火を上げ、本番を「千秋楽」と銘打つ。既に羽黒地域で打ち上げられ、大会のテーマ「『綺笑天結(きしょう てんけつ)』~永遠に輝く、地域の誇りへ~」は、大会に物語性を持たせて展開するため「起承転結」の意味合いを込めたネーミングにした。
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酒田まつりは、メイン会場の旧マリーン5清水屋前で酒田時代行列、酒田花魁(おいらん)道中といった、例年通りの本祭りを繰り広げる。今年は日吉町二丁目の国登録有形文化財「山王くらぶ」に、山居町の市観光物産館「酒田夢の倶楽(くら)」から「おしん」関連の展示が移転、まつり会場からの道のりがより近くなった。「いろは蔵パーク」を含めた回遊性が増した。
どの祭りも、その地域の氏神様への信仰が底辺に流れている。見て楽しむことはもちろんのこと、それぞれに異なる祭りのいわれを知り、人々が大事に伝承してきたことを学べば、祭りの楽しみも増す。今年のように記念の多彩な催事であれば、地域を知る絶好の機会になる。