2025年(令和7年) 4月26日(土)付紙面より
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「少子化だけではなく、子どもたちの生活が多様化し、日常が忙しくなった影響だろうか」―。全国で最も長い歴史を持つ「酒田海洋少年団」が2025年、団設立以来初めて年度当初の新入団員がいなかった。冒頭は長年団活動を見守ってきた鈴木兵一団長の言葉。伝統が先細りしていくことへのやるせない気持ちが表れているようだ。
童謡、文部省唱歌の『われは海の子』。2番に〈…波を子守歌と聞き…寄せて来る海の気と風に当たって、わらべとなりにけり…〉というような意味合いの歌詞がある。浜辺と松原に近い環境、つまりは潮風に当たってたくましく成長した様子を歌ったものという。
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酒田海洋少年団は1951年、日本海洋少年団連盟の発足と同時に設立。それ以来活動を休止しないで存続しているのは全国で酒田、横浜、神戸の3少年団だけ。設立初期には約400人もの団員がいた。酒田には北前船の往来で港町文化がもたらされた。港町酒田のにぎわいは、子どもたちを海への夢に誘った。86年には日本海洋少年団全国大会も酒田で開かれた。
海に関する知識を学ぶことは、四方を海に囲まれた日本ではごく自然の流れ。港がある酒田の環境は、子どもたちの夢を海洋少年団へと引き付けた。現在の活動は原則として毎週日曜日、市総合文化センターを拠点に手旗訓練、ロープ結索、カヌー訓練など、海に親しむことのできる活動をしている。
海に学ぶことでは、日本財団の「海と日本プロジェクトin山形」の取り組みがある。県内の小学高学年が対象の「海洋塾」で、庄内浜の漁業や食文化を学ぶ。加茂水産高校の漁業実習船「鳥海丸」で体験航海、海中を観察して庄内浜の生き物を知る。併せて海のごみなどの自然環境を学び、未来の暮らしに生かす活動をしている。酒田海洋少年団では「人を助けて親切にする、礼儀を正しく守る」―などの、人としての生き方のマナーをも学んでいる。
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全国的に海洋少年団の数が減っているという。子どもの生活が多様化し、クラブ活動や部活動で時間的に忙しくなったということは否めないようだ。もちろん勉強も。ただ、家に居ながらにして楽しむゲームのとりこになってはいないだろうか。「インドア派」から、時には「アウトドア派」になることも大事だ。
子どものころから海に関する知識を学ぶ。そのような場の海洋少年団でさまざまな経験を積めば、人づくりにつながる活動になる。港がある酒田市ならではの活動だ。年度当初の新入団者はいなかったが、前年からの進級者は活動している。希望者はいつでも入団できる。ぜひ鈴木団長=電090(3367)2638=に問い合わせてもらいたい。酒田の「人づくり文化」を守るためにも。