2025年(令和7年) 4月26日(土)付紙面より
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腸内細菌研究に基づく医療・創薬事業に取り組むベンチャー企業・メタジェンセラピューティクス(鶴岡市、中原拓社長)は24日、国内初の献便施設「つるおか献便ルーム」を鶴岡市の鶴岡サイエンスパーク内に開所した。提供者となるドナーの健康な便から腸内細菌を抽出し、医薬品の原材料とするほか、難病指定の潰瘍性大腸炎の先進医療として注目されている「腸内細菌叢(そう)移植」の原材料にも活用する。
同社は順天堂大の医師と、慶應義塾大、東京工業大の研究者が2020年1月に創業。難病の潰瘍性大腸炎に対する治療薬の開発、腸内細菌叢移植などの研究を進めている。
市先端研究産業支援センターのF棟1階に整備した献便ルームは、便を採取する3つの専用トイレ、休憩スペースを設けた。隣接する設備で腸内細菌を抽出し、溶液にして冷凍した後、川崎市内の治験薬製造施設(今年5月開設予定)でカプセルタイプの経口治験薬を製造する。来年には日本と米国で臨床試験開始を予定し、2032年の承認・販売開始を見込む。
献便ルームで便を提供するドナーの候補者は鶴岡市を中心にした庄内地域在住者で、18―65歳の健康な人。希望者はウェブサイト「ちょうむすび鶴岡」に登録し、市立荘内病院での血液検査や腸内細菌叢検査など適格性検査(無料)を経て、正式にドナーとなる。便提供1回につき最大5000円の協力金が支払われ、同社は初年度に数十人から100人程度のドナー登録を目指す。
開所式が同日、現地で行われ、関係者ら約60人が出席。中原社長は「豊かな食材と食文化があり、日本で初めてユネスコ食文化創造都市に認定された鶴岡は、最高の腸内細菌を集めるのに最適な地域。多くの市民から協力を頂き、健康な腸内細菌を持ってきてもらうのが一番大事だ。この献便ルームを通じて『健康な腸内細菌のまち鶴岡』『腸活のまち鶴岡』を広めていきたい」と話し、「世界最大の便由来製剤企業として1兆円企業を目指す」と述べた。同社は、鶴岡の献便ルームをモデルに、将来的には同様の施設を全国に複数カ所開設する方針。