2025年(令和7年) 5月9日(金)付紙面より
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庄内地方に江戸時代から伝わる伝統的な釣り竿「庄内竿(ざお)」を使った釣り大会が4日、鶴岡市加茂地区周辺の磯で開かれ、県内外からの参加者が独特なしなりを持つ竿でクロダイ釣りに挑んだ。
庄内浜での磯釣りは江戸時代、魚との「勝負」と呼ばれ、鍛錬とともに武士道にも通じる「釣道」として藩主が奨励。数年かけて苦竹(にがだけ)で作る継ぎのない延べ竿(一本竿)は武士の刀と同等に扱われ、「名竿は名刀より得難し」とも言われていた。
こうした釣り文化を継承し、庄内竿の作り手確保にもつなげようと、昨年釣り好きの有志で結成した同市の「荘内竿釣道会」(佐藤滋会長)が初めて企画し、地元や県外から釣りの初心者の若者から年配のベテランまで13人が参加した。
午前5時前に開催に協力した「渚の交番カモンマーレ」に集合し、鶴岡市千安京田の庄内竿作り師、朝香孝一さん(77)製作の三間(約5・4メートル)の延べ竿を手に、「武士道精神で挑もう」との呼び掛けで「勝負」を開始。長尺の竿を持ち、各磯へと向かった。
和竿のルアー用ロッドを製作・販売している埼玉県さいたま市の加藤千晃さん(34)と添野友洋さん(34)は以前、朝香さんの工房を訪ね、庄内竿作りを学んだ縁で参加した。2人は庄内竿を手にして調子を確かめながら「庄内竿で実釣でき、感動を覚える。庄内藩伝統の釣道で勝負を楽しみたい」と興奮した様子で話した。朝香さんは「庄内竿は手元近くから曲がるしなりが特徴。大物が掛かっても決して穂先や先端で折れることはない。江戸時代からの独自の磯釣り文化を何とか守っていきたい」と話していた。
この日は昼近くまで勝負を続け、全体で40センチ近くと20センチ級のクロダイ2枚、アジ6匹の釣果だった。荘内竿釣道会は、本番となる秋磯での大会開催も計画している。