2025年5月18日 日曜日

文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

荘内日報ニュース


日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ
  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る

2012年(平成24年) 6月14日(木)付紙面より

ツイート

800年の時を超え対面

 神奈川県中井町の住民たちが12日、鶴岡市大鳥地区に、開村にまつわる落人伝説とともに伝わる「大日如来坐像」(市指定文化財)を参拝に訪れた。約820年前、村の開祖・工藤祐茂(大学)が相模国・田中(現中井町)から捧持してきたと伝わる仏像だが、中井町では「盗まれ、行方不明」とされてきたもの。このほど大鳥にあることが分かり、800年の時を超えて対面した同地区の関係者を「大日如来の不思議な縁」と喜ばせた。

 大日如来坐像は高さ約30センチの彫刻で、鎌倉時代の作とされる。大鳥地区の伝説によると、源頼朝の要人だった工藤祐経が曽我兄弟に討たれた後、伊豆の留守居役を務めていた弟の祐茂は身を案じ1193(建久4)年、伊豆を逃れた。甲斐、信濃、越後・山北を経て1199(正治元)年、大鳥にたどり着き開村した。伊豆から逃れるとき、田中の森に鎮座していた大日如来坐像を厨子ごと背負って捧持してきた。

 仏像は大鳥の二階巣(誉谷)の大日山・大日堂に安置され、「火伏せ如来」として慕われてきたが、お堂の老朽化や過疎化によって維持が困難になった。このため大鳥地区大日如来保存委員会が組織され2005年6月、地区内の龍雲院(藤原知雄住職)に移した。

 一方、「盗まれた」と伝わる中井町では、代わりの大日如来像を作り、半分形(はぶがた)地区自治会館に安置していた。1979年にこの後継の仏像を調査したとき、内部から胎内仏と共に、なくなった経緯や、後継の仏像が2代目(本物から数え3代目)で享保18(1733)年に作られたなどの記録が見つかっていた。

 両地区を結んだのは、母親が大鳥地区出身という工藤登美子さん(72)=千葉県野田市。仏像が龍雲院に移されたときの由来書を昨年、毛筆で書き同院に奉納。歴史好きの知人女性にも贈ったところ、この知人を通じて由来書が中井町教育委員会に届き、同年9月、同町文化財保護委員会で話題になった。

 今回、訪れたのは今年3月まで同町文化財保護委員を務めていた森茂さん(79)=農業=を団長とする半分形地区の9人。龍雲院に安置されている仏像を参拝して祈祷(きとう)を受け、祐茂の子孫ら大鳥地区の住民、縁者ら約20人と懇談した。

 森さんは「ここにあると知ったときは『まさか』と本当にびっくりした。800年も前になくなった仏像に対面でき、大日如来の不思議な縁を感じる。この縁を大切に、交流を続けたい」と話した。

 工藤登美子さんも「不思議な因縁を感じる」と感慨深げ。藤原住職は「これを機に、末永く懇意にしていきたい」と話した。一行はその後、地区内の祐茂の墓も参拝した。

龍雲院に安置されている大日如来坐像
龍雲院に安置されている大日如来坐像



日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ

記事の検索

■ 発行月による検索
年  月 

※年・月を指定し移動ボタンをクリックしてください。
※2005年4月分より検索可能です。

  ■ キーワードによる検索
   

※お探しのキーワードを入力し「検索」ボタンをクリックしてください。
※複数のキーワードを指定する場合は半角スペースを空けてください。

  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る
ページの先頭へ

ニッポー広場メニュー
お口の健康そこが知りたい
気になるお口の健康について、歯科医の先生方が分かりやすく解説します
鶴岡・致道博物館 記念特別展 徳川四天王筆頭 酒井忠次
酒井家庄内入部400年を記念し、徳川家康の重臣として活躍した酒井家初代・忠次公の逸話を交え事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第2部 中興の祖 酒井忠徳と庄内藩校致道館
酒井家庄内入部400年を記念し、庄内藩中興の祖と称された酒井家9代・忠徳公の業績と生涯をたどる。
致道博物館 記念特別展 第3部 民衆のチカラ 三方領知替え阻止運動
江戸幕府が3大名に命じた転封令。幕命撤回に至る、庄内全域で巻き起こった阻止運動をたどる。
致道博物館 記念特別展 第4部 藩祖 酒井 忠勝
酒井家3代で初代藩主として、庄内と酒井家400年の基盤を整えた忠勝公の事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第5部 「酒井家の明治維新 戊辰戦争と松ケ岡開墾」
幕末~明治・大正の激動期の庄内藩と明治維新後も鶴岡に住み続けた酒井家の事績をたどる。
酒井家庄内入部400年
酒井家が藩主として庄内に入部し400年を迎えます。東北公益文科大学の門松秀樹さんがその歴史を紹介します。
続教育の本質
教育現場に身を置く筆者による提言の続編です。
教育の本質
子どもたちを取り巻く環境は日々変化しています。長らく教育現場に身を置く筆者が教育をテーマに提言しています。
柏戸の真実
鶴岡市櫛引地域出身の大相撲の元横綱・柏戸の土俵人生に迫ります。本人の歩み、努力を温かく見守った家族・親族や関係者の視点も多く交えて振り返ります。
藤沢周平の魅力 海坂かわら版
藤沢周平作品の魅力を研究者などの視点から紹介しています
郷土の先人・先覚
世界あるいは全国で活躍し、各分野で礎を築いた庄内出身の先人・先覚たちを紹介しています
美食同元
旬の食べ物を使った、おいしくて簡単、栄養満点の食事のポイントを学んでいきましょう
庄内海の幸山の幸
庄内の「うまいもの」を関係者のお話などを交えながら解説しています

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field